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2007年11月 2日 (金)

マリオギャラクシー発売に際して。もう一度夢を下さい

 1996年4月に発売予定だったそのゲーム機は、「発売日の販売台数確保」と「同時発売するソフトを更に作り込む為」という理由で同年6月23日に延期された。
 同時期に発売するゲーム機は無く、大幅な延期でもなかったが、春商戦からの後退は多少の悪影響はあったかもしれない。だけど、延期発表の前から失敗するだろうという空気が漂っていた。事実、発売日は売り切れも結構あったが、どこに行っても売ってない状況でも無かったし、品不足はすぐに解決した。延期をしないで4月に発売していたら発売日の出荷台数が少なくなっただろうから、もしかしたら何処に行っても売っていない状況で「大人気!」を演出できたかもしれない。だけど、その後の小売店やユーザーをバカにしてるほどのソフト不足により、最終的な結果は変わらなかったろう。
 つまり、この延期はNINTENDO64の歴史にはあまり影響が無かった事なんだと思う。

 だが、もう一つの理由。「同時発売する『スーパーマリオ64』のチームから発売延期の強い要請があった為」には非常に大きな価値がある。価値があると信じている。また、本当にそういう強い要請があったんだと信じている。

 同様の家庭用ゲーム機は多数あったが、事実上任天堂が独占していたゲーム市場は、ソニーのプレイステーションとセガのセガサターンに奪還されてきていたし、なによりスクウェア(現:スクウェアエニックス)のプレイステーション参入がトドメになった。第一次(?)次世代ゲーム機戦争は、3社が揃う前に終戦ムードだった。
 任天堂はハードメーカーだが、ソフトメーカーとしても強大だ。それはFC時代からの事だし、N64時代もそうであったし、今もそうだ。だが、そんな強大なメーカーも、事実上数百社のサードパーティを敵に回したのでは分が悪すぎた。

 「大容量」「安い」「製造が早い」と、任天堂が推奨してきたROMカードリッジの弱点を全てクリアしたCD-ROMメディアは、確かにソフトメーカーには魅力的だったろう。ROMカードリッジでも、N64はSFCの数倍の容量が使えた。が、CD-ROMではその百倍は使える。比較的安価で数枚組にも出来る。体験版という新しい宣伝も出来る。
 事実上プリライトムービーが使えないN64はスペックでは上なのに、一般層にはPSの方が美しいグラフィックのゲームが沢山あるという印象があったのも事実。今も言われているが、一般層にスペックなど関係ない。
 ムービーだけではない。3Dだけでは荒が目立つのだが、大容量を活かして2Dの一枚絵は使い放題。その上では荒のある3Dキャラも溶け込んでしまう。FFやバイオハザードが有名どころかな。

 ROMカードリッジのメリットは、「読み込みが無い」と「拡張性」だけだった。一般層には「読み込みが無い」というのはとてもわかりやすいメリット。読み込みがあったり、長い方が良いワケなどない。また、スポーツゲームなどの実況では圧倒的にカードリッジの方が有利な部分があったが、PS側の技術力の向上+大容量の組み合わせは、一般層にとってのN64のメリットを殺すには十分だったのかもしれない。
 また、子供にも扱いやすいというメリットも非常に良いと思うが、セールスポイントにはならなかったようだ。

 そして、そんな数百メガバイトのメディアが主流になりつつある中、『マリオ64』はたった8メガバイトのカードリッジに詰め込まれた。ムービーは使えない、フルボイスの音声が入るワケでもない、ムービー再生に使ったりしたらたった数秒の容量なんだろう。そんな小さな小さな入れ物の中を練り込む為、更に2ヶ月が用意された。

 周りのゲーム話はPSの話題になっていき、カッコイイやらクールやら大迫力やらという話題が飛び交うようになった。オイラはスクウェアの大ファンだった。ファンジックな世界観の中を、個性あふれる誰でも馴染めそうなキャラクター達が行き交う作品群に惚れ込んでいた。キャラクターがどんなにカッコイイ魔法や技を繰り出しても愛くるしさを感じさせてくれたし、愛くるしさを感じさせるのにかっこよかった。
 そんなスクウェアのPS参入。そこまでは良かった。公開された画面写真郡に、オイラが馴染んできた、大好きだったキャラクターはいなかった。美しいグラフィックとムービー、誰でも馴染めそうだったキャラクターは6頭身(?)になり、顔もリアルでクールな「大人」になった。そんな大人になったキャラクターのバックに聳え立つ重厚な世界観に、オイラは夢を感じる事が出来なかった。

 しかし周囲は違った。重厚な世界観とクールなキャラクターに熱狂していた。観たこともない美しい画面に酔いしれていた。オイラなりに努力はしたつもりだ。だが、どうしても、どうしても馴染めず、好きになる事ができない。
 「お前は客じゃない」「魅力を感じないお前がおかしい」「つまらなそう?みんなはそんな事言わないよ?」と語りかけてくるコッソリ買ってきたPS専門誌。元々流行を追う性格ではなかったが、この頃から、良くも悪くも「オレは他とは何か違う。だから我が道を行こう」なんて考えがこびりついたように思う。
 当時は、まさに周囲と同じ音楽を聴き、同じテレビ番組の話題で会話が弾み、同じような格好をしだす年頃。つまりは思春期真っ只中。そんな中、少なくとも自分の周りでは「ダサイ・ガキくさい」というイメージが定着しつつあったN64は最悪だった。
 他に堂々と言える趣味もなく、周囲との大きな接点を失うのはわかっていた。それでも、楽しくなさそうなゲームより、楽しそうなゲームを買いたかった。周囲と会話が弾む事で楽しさを見出せたかもしれないが、それ以上の楽しさを『マリオ64』から感じ取ったのだから仕方ない。夜眠れないほど悩んでもダメだった。何十回PS雑誌を読み直してもダメだった。読みすぎで破けたりしてたのは今でも覚えている。こんなに苦しい想いをしてもダメなのかと苦しんだ。悩んだ末、ゲームで苦しい想いをしてる時点で違うんじゃないか?という答えにやっとで辿り着いた。
 結局、浮く存在になる事、周囲との大きな接点を失う事を覚悟し、オイラはSFCの次をN64にすると決めた。
 
 N64ソフトの値段は高い。PSでは5,800円や6,800円が一般的なのに『マリオ64』は9,800円だった。当時は税別表示なので、税込みでは1万円オーバー。PSゲームなら二つは買えたかもしれない。
 それでも小遣いを貯めて、欲しい物を我慢して買ってきた『マリオ64』。SFCパッケージの2倍はあろうかという大きな箱から出てきたSFCより一回り小さなカードリッジは、その時点で宝物だった。

 そのカードリッジを、それまで数百時間遊んできただろうSFCと同じようにN64に挿す。初めて触るゲーム機なのに、もう何回も遊んできたような錯覚すら感じた。
 初めて握るその奇抜な形のコントローラもスッと手に馴染んだ。コントローラの一番の目玉「3Dスティック」に戸惑いながらも立体となった箱庭世界をマリオと共に自由自在に走り回る。それだけでも楽しい。スティックが馴染んでくると、本当に思った通りにマリオが動いてくれる。「歩く」と「走る」だけじゃない、進む方向は上下左右の4方向ではなく360度。行き止まりですら”行き止まりを見つけた”という快感にまでなる。
 3Dというリアルを手に入れた従来の敵キャラ達。オイラにとってそれらは、FFのような”変貌”ではなく”ただの進化”であり、根本的に何も変わっていない。新しいものを理解する努力なんかしなくても、ス~と入ってきてくれた。自分を曲げて合わせる苦痛なんてない、最初からオイラに合っていた。

 遊べば遊ぶほど、正しい選択をしたんだと確信していた。確かに周囲からの疎外感は悲しい。だけど、遊んでるときは楽しい、嫌な事を忘れられる、没頭できる、夢の中にいられる・・・何事も自分に合っている物を選ぶのは当然。こんなに楽しいと思ってるんだから、合っていたんだ。
 そもそもゲームは楽しいものなんだ。趣味とは自分の好きな事・楽しい事なんだ。楽しいと思えているんだから、正しかったんだ。誰にも迷惑をかけているんじゃないだ、周りが何と言おうがいいじゃないか、自己満足でいいんだ、なんて。

 『スーパーマリオギャラクシー』の操作は、『マリオ64』とほぼ同じ。走りながらしゃがんですぐにジャンプする「走り幅跳び」は最も複雑な操作の一つ。10年以上という年月すら、この操作をオイラの手から忘れさせてはいなかった。一発で出来た。何回も連続で出来た。
 変なところだけど、走り幅跳びが出来たとき、ブワッときてしまった。10年前、周囲にバカにされながら無我夢中で没頭していたマリオがそこにいた。格段にキレイになっているだけで、ステージが球状になっただけで、それは紛れなくオイラを没頭させた夢に満ち溢れたマリオの世界。

 まだプレイしたばかり。『マリオ64』ほど面白いかはわからない。また、10年前よりオイラは大人になった。嫌な事・悲しい事・ストレスになる事はグッと増えた。現実しかない大人の世界に浸り、ある意味、随分冷めたものだ。
 だけど、そんなオイラにも、マリオは10年前と同じ夢の世界を提供してくれるだろうか?明日の事など忘れ、寝る時間を惜しみ、嫌な事も忘れ、食事の時間すらもどかしかったあの頃のトキメキを感じさせてくれるだろうか?

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